いつかウェディングベル
翌日、午後には加奈子のドレス選びの為に時間を空けなければならない俺としては大変な一日になっていた。
そうとは知らず加奈子は待ち合わせの時間より少し早めに会社へと来てしまった。
「奥様、こちらでお待ちいただけますか?」
接客中の俺の邪魔にならないように秘書が加奈子を秘書課隣の控室の方へと案内していた。
加奈子は俺がまだ仕事中とは思わなかったようで「大丈夫よ」と専務室へと入って来た。
「透、出かける準備は出来たの?」
いきなり入って来た加奈子に俺も接客中のお客も驚いてしまった。
接客中の俺は得意先の会社の令嬢でもあり副社長でもある彼女と商談中だった。
「あ、ごめんなさい。お客様とは知らずに。」
「申し訳ありません。妻には商談中とは知らせていなかったもので。」
「奥様?」
「加奈子、紹介するからこっちへおいで。」
加奈子とのドレス選びの為に時間を割こうと自分の中だけでスケジュールを組んでいたのが裏目に出てしまったようだ。
得意先のお客様に不快感を与えてしまったのはこちらの責任でもある。
この人は失くせない得意先だ。大事にしなければならないのに加奈子には説明をしておくべきだった。
「美薗さん、こちらは妻の加奈子です。」
「よろしく奥様。」
「加奈子、得意先の株式会社オオサキの令嬢の大崎美薗(おおさき みその)さんだ。」
「初めまして。商談中に失礼しました。」
一見和んだ雰囲気に見えるが彼女はかなり気の強いところがある。加奈子の無礼を許してくれればいいのだが。
そう思っていると案の定、彼女は加奈子のお腹を見て考え事をしていた。
「奥様はおめでたなのね?」
「ええ、まだそれほど目立ちませんが。よく分かりましたね。」
「おめでとうございます。お子様の誕生が待ち遠しいですわね。でしたら、今夜のパーティは奥様には少々お体がお辛いんじゃありませんこと? 良ければ私をエスコートして頂けると嬉しいわ。」
やはり彼女は加奈子がいきなりやって来て、商談中の俺達の会話を邪魔したことを怒っている。
彼女の怒りを鎮めるのが先決だが、そうなると加奈子も黙ってはいないだろう。