いつかウェディングベル
「お気遣いありがとうございます。」
にっこり笑顔の加奈子は俺はとても恐ろしく感じてしまう。
多分、加奈子は商談を邪魔したことより美薗さんにエスコートして欲しいと言われたことの方が気になっているだろう。
「ですが、大丈夫ですよ。夫はとても私には優しくて大事に扱ってくれますから。それに今回のパーティも夫に是非にと誘われているものですから。お産が始まろうが出席致しますわ。」
明らかに対抗心剥きだしだと分かる物言いだ。
加奈子、頼むから相手は得意先の令嬢なのだからほどほどで止めてくれよ・・・・
「加奈子、まだ商談が残っているんだ。少し隣の部屋で待っててくれると助かるよ。」
「あら、お出かけなんですか? お忙しい所へお邪魔したのかしら?」
「いえ、今夜のパーティのドレスを新調しようと思いましてね。」
「まあ、それでは奥様大変ですわ。今が一番流産しやすい時期なんでしょう? 車で連れ回すのは良くないことですわよ。それに、今日初めて着るドレスなんて疲れる一方奥様がお可哀想ですわ!それにお腹の子にも良くないことよ。」
加奈子に大人しく家で留守番していろってハッキリ言ってるようなものだ。
俺は妻子持ちなのに何故ここまで俺にエスコートさせたがるのか理解に苦しむ。
美薗さんはそんな人ではないのだが、何かあったのだろうか?
「加奈子、今日は仕事が立て込んでいるから家で待っててくれないか?」
「分かったわ。」
家で待つと言う意味は買い物にいかないということだ。そして、パーティ用のドレスを買わないのはパーティへ行く気が無いという事になる。
俺が美薗さんをエスコートするのだと分かったんだろう。加奈子はかなり落ち込んだ表情をして部屋から出て行った。