いつかウェディングベル

夕方早めに帰宅するとかなり不機嫌な加奈子が俺を待っていた。


本来ならば妻をエスコートしてパーティへ行くのが当然だが、今回は特別に涙で語る美薗さんの為に協力し、美薗さんをエスコートすることにした。


俺がエスコートすることで婚約者の反応を知りたいと言うものだ。


しかし、愛妻家で名が知れている俺では役立ちそうにない気がするが、それでも良いのだろうかと疑問に感じながらこの役を引き受けてしまった。


加奈子には余計なことを話したくないから美薗さんのことは話さずにおこう。


美薗さんの結婚話が出れば俺の政略結婚まで話すかもしれない。


そうなると加奈子に嫌な思いをさせるだろう。ただでさえ、そのことで加奈子ら家族を傷つけたのだから。


これ以上加奈子を傷つけるようなことをしたくない。




「加奈子、俺のシャツを出してくれないか。」


「全部出してます。シャワー浴びるんでしょ?」


「あ、ああ。ありがとう。」



俺の顔を見ようとせずそっぽを向いたままだ。それほどパーティへ行きたかったのだろうかと悩んだが、今回ばかりは美薗さんの結婚が幸せなものになるように協力したいと思った。


一度は好意を持ってくれたと言う美薗さんに、俺が加奈子と結婚して得た幸せを美薗さんにも感じて欲しいと思ったからだ。


だけど、こんな話はきっと妊婦の加奈子は聞きたい話ではないだろう。



加奈子が準備してくれたスーツを着て準備を整えると玄関へと向かう。


加奈子は妻らしく俺を送りだしてくれる。



結婚当初はパーティへ着ていく服装が分からずにかなりお袋を困らせていた。


だけど、今では立派に妻としてその役目を果たしてくれている。今の加奈子は柿崎家後継者の妻としてお袋からの指南を受ける必要はないのではないかと思えるくらいに頼れる妻になっている。




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