いつかウェディングベル

「私達も踊りましょうか?それとも、婚約者の気を惹くためにもっと親密そうに話しでもしますか?」



俺はそれっぽく彼女の耳元で囁くように言ってみた。

こんな経験は初めてでもないだろうに顔を赤く染める美薗さんの可愛さに彼女を見つめていた。




「あの、本当に奥様はいらっしゃってないの?」


「ええ、こんな所を見られたら生きた心地はしませんよ。」




芝居だと事前に説明していても、加奈子ならきっと頬を膨らませて怒るだろう。そんな可愛くて愛らしい加奈子の想像ができる。



「奥様はそんなに怖いかたなの?優しそうに見えたけど。」


「とても優しい妻ですよ。でも、意思の強い人で何事にも最後まで責任を持って行動しようとする立派な女性です。」


「素敵な方なのね。」


「ええ、彼女のような女性とはもう二度と会うことはないでしょう。たまに抜けたところもありますけどね。」


「奥様を愛してるのですね」


「ええ。加奈子は私の天使ですよ。」



天使と言うのは少々乙女チック過ぎた言い方だったろうか?


けれど、本当に俺にとっては加奈子は天使そのものだ。


儚げで守ってやりたくなるのに、俺は加奈子の翼に包まれて守られている。


加奈子の深い愛情に包み込まれた俺は幸せのなか生きていける。


彼女の羽が折れてしまえば、きっと、俺達は路頭に迷う子羊のようになるのだろう。



「羨ましいわ。私もそうありたいわ。」



「踊りましょう、美薗さん。」



踊りの輪の中へと美薗さんを誘い込みかなり体を近づけ俺達は踊っていた。


こんな場面を加奈子に見られたら言い訳なんて難しいだろうと思うと笑いが出ていた。


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