いつかウェディングベル

俺と美薗さんが親密そうに話をしていたのが婚約者の目にも止まったようで、さっきから俺たちの様子を伺っていた。


彼の美薗さんを見る目の熱さに二人の未来は明るいのではないかと思えた。


だから、俺は彼女を目立つ場所へと移動させて踊っていた。


曲が変わっても他の男の踊りの誘いを断らせ俺とだけ踊った。


すると、妻子持ちの俺が女に手を出しているのかと疑われる様な目で見られている。


俺と美薗さんが愛人関係にあるのではないかと疑う者がいるとしたら実に滑稽な話だが、彼女の婚約者には不愉快な噂だろう。


流石に連続して美薗さんを相手に踊っていると婚約者の男が近づいてきた。


婚約者のかなり厳しい表情にやり過ぎてしまったかと少し緊張が走った。



「柿崎さんでしたね?」


「JQ株式会社の専務をしてます柿崎透です。美薗さんとは仕事をご一緒させてもらっています。」


「そうでしたか。かなり美薗とは親しいようで婚約者としては妬いてしまいたくなりますよ。」


「え、と、」


「あ、失礼しました。私は日下秀彦(くさか ひでひこ)と申します。」


「美薗さんから貴方の話は耳にタコができるほど聞かされてますよ。日下さん。」


手を差し出されたので直ぐに応じて握手を交わすと日下さんの握りしめる手がかなり力が入り痛みを感じるほどだ。


多分、俺の存在がかなり目障りなのだろう。


この人は婚約者である美薗さんに気があるのは間違いない。


握手する際の俺を見る目付きの鋭さが美薗さんへの愛情を感じる。


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