みんなの冷蔵庫(仮)1
「帰ってないよ」


京極は私達の肩から手を離し、体ごと謙信先生に向けた。


「帰ってないけど、自宅療養中ってことに切り替える。引き続き病名は非公開で頼む」


そう言うと、出口に向かって歩き出す。

シグマと私は交互にお礼を言って頭を下げ、スタスタと早足で廊下に向かう京極に駆け足で追い付いた。

薄暗い院内の廊下を、姿勢よく歩く京極の後ろ姿が寂しそうに見えるのは、さっき謙信先生からあんな話を聞いたからだけではない気がする。


さっきは謙信先生が開けてくれただけで、普段は日曜には正面入口の自動ドアは開いていないらしく、私達は外に出るため救急外来入口に向かう。

待合室に入りきらない患者さんとその付き添いの人達が、いくつもある通路のソファーにずらりと並んで腰掛ける廊下を通り抜け、外へ出た。

入口前のロータリーに、黒いベンツが停まっているのが目に入る。


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