みんなの冷蔵庫(仮)1
「誘惑は未遂?」


シグマが助手席のシートにかじりつき、京極を覗き込むように聞いた。

私は今佐田さんがどんな顔をしてるんだろうと、気になってルームミラーを見た。
そこにはまるで無表情の、運転に集中する目が映っていて、佐田さんは既に知っている話のようだった。

佐田さんは何でも知ってるんだな、と思うと、シグマの気持ちも、私の気持ちも、知っているのかも知れない、と、何か得体の知れない、漠然と不安な気持ちに飲まれそうになる。


「当たり前だ。裸でセックスしても楽しくない」

「ええっ! そこっ?!」


京極がサラっと言い、三人の大声のツッコミが、車内に重なって響いた。

私と、シグマと――

野崎さんの声が。


「佐田もなにかされたみたいだぞ。教えてくれないけど」


京極が意地悪な口調で言い、運転席の方を向いた。
まだ助手席にしがみついているシグマも、後部座席真ん中に座る私も、佐田さんに視線を集中させた。


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