みんなの冷蔵庫(仮)1
「いや、本当、そーゆーのじゃないんで」


やっとの思いでそう言うと、お肉に包丁を突き立てた。

お肉に八つ当たりしたりなんかして恥ずかしいけど。


「好きなら努力が必要だよ」

「えっ……?」


野崎さんが八重歯を見せてにっこり笑い、皮の剥けたジャガ芋をまな板に置いた。

急に邪気の無い、純粋な子供みたいな顔をするもんだからドキッとする。

いや、子供じゃなくて……

恋してるんだ。
恋する乙女の顔なんだ。

野崎さん、恋してるんだ。

その素直さがすごく、すごく可愛くて、私の中の野崎さんは、最初の印象と大分変わった。


「はい」


私も笑顔で返す。

シグマが安心したように、またお皿を洗い出した。


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