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「おい、何処まで行く気?」
スタスタと先を急ぐ美咲の背後に声を掛けると、
「もー少し、」
そんな軽快な声に思わず苦笑いになる。
さっきまでの沈んだ美咲とは違い、声も表情も明るくなった美咲に俺の心は安堵する。
美咲が足を止めた場所は砂浜と海の境目だった。手に持っていたヒールを投げた美咲に、
「濡れんぞ」
呆れながらそう言った。
その瞬間、ザバッと押し寄せてきた波の所為で、美咲の足は水に浸かる。
ほらな。そんな際まで行くから。
「だから言っただろ」
困った顔で足元を見つめる美咲に呆れたため息が零れる。
「言うの遅いよ」
「普通分かんだろ」
顔を顰めた美咲にため息交じりに呟いて、笑みが零れ落ちた。
その濡れた足がどうでも良かったんだろうか、美咲は自分から海に入りギラギラした太陽に向かって空を仰いだ。
「気持ちぃー」
本当に気持ちよさそうに空を仰ぐ美咲を見て俺も見上げるも、あまりの太陽光にすぐに視線を逸らす。
未だに目を瞑って、空を見上げる美咲に自然と心が緩んだ。
薄く茶色に染まった長い髪が緩やかに吹く風に靡き、その色白の肌を焦がしてしまうような光。
何を思って考えてんのか分かんないその姿から視線を逸らした時、
「私ね、」
そう呟いた美咲の声に、再び視線を向けた。
「うん?」
足元を見つめてた美咲は、少し寂しそうに足で水をかき上げた。