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「私、留学したいんだ。だからね、あの美術館によく行くの」
あまりにも簡単に口を開いた美咲に正直驚いた。
だけどそんな事よりもっと驚いたのは、留学って言葉。
「へぇー…。行き先はオーストラリア?」
あの写真の前でのめり込む様にして見つめてたんだから、きっとそうだろうって思った。
瞬きすら忘れて見つめるあの姿が未だ目に焼き付く。
「うん。小さき時からの夢なの。だからお金が必要って事もあるんだけど、私の親も離婚してんだ。それに家のローンだってあるし…」
「……」
「ママはね、仕事してその後24時間スーパーで働いてんの。何度かママが倒れた事だってあるし、そこまでママが働く理由は私の所為なの…」
初めて聞いた美咲の心に潜んでいるものを聞いた瞬間、やっぱり俺の過去と重なり合って、嫌でもシンクロナイズする。
「みぃちゃんの所為?」
俺に振り向いた美咲は表情を崩しコクンと頷いた。
「私が…、私が留学したいなんて言ったから。だからママ、私の所為で寝る暇もないくらいに働いてて。だから私の――…」
「それは違うと思う」
思わず遮ってしまった。
もう全てが俺と同じで。でも、違うのは美咲が母親を大事にしてるって事。
それに、お前は凄いと思うよ?ちゃんと夢もあって。
俺には考えられない事だったけど…
「違うって何が?」
「みぃちゃんの所為だって思ってねぇって事」
「思ってないって、ママが?」
「そう」
「そんな事ない…ママは思ってるよ。だから必死になってんの!だから私も頑張ってんの!!」
必死になって叫んだ美咲の言葉に俺は無意識に表情を崩した。
ってか、お前の必死になってるやり方は違うだろ。
あの時の必死になってた過去の俺のやり方も違うけど。
俺が偉そうに言える立場じゃない。
立場じゃないけど、そんなやり方で、誰も喜ぶ奴はいねぇよ。
周りが苦しむだけ。
そしてお前の大事な母親も。