タイムトラベラー・キス

メニューに悩んでいたのではなく、野々村くんの女性遍歴について考えていたのだが、とても本当のことは言えない。


「私、そんなに変な顔してた?」


「うん、すげーブサイクだった」


「えっ、ちょっと失礼すぎ!」


野々村くんはとっても楽しそうに笑っているけれど、私は激おこぷんぷん丸ですよ。
まったく、たまに失礼なことを言うのは今も昔も変わってないみたいだ。


……野々村くんはハンバーグのビッグサイズを注文し、私はオムライスを注文した。
セットのスープとサラダを食べながら、今日の映画の感想などを語り合った。



「俺、久しぶりに映画を見に行ったわ。やっぱり家でDVD見るのとは違うよな」


「迫力が違うよね!私はこの前も観に行ったかな」


「…………ああ、そうだよな」


複雑そうに笑う彼の顔を見て、自分の失言に気が付いた。
先月、私と竜見くんが映画デートしたことを、野々村くんが知っていてもおかしくはない。

このタイミングで竜見くんとのデートを匂わす発言をしたら、空気を悪くするに決まっている。
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