彼の優しさ

「今はその不審者、この傷で現行犯で逮捕されました。」……事務的だな。

「まぁ、わたしは左利きなのでかなり日常生活に負担があるぐらいですね。」……第3者目線があるんだけど、気のせいじゃないよな。

「すみませんけど、お医者さんから『あまり動かさないで』と言われたので体育の授業は見学になってしまうのですが…大丈夫でしょうか?『診断書は出す』とお医者さんから言われたんですけど」体育科の島原先生に聞いてる。

「分かった。」と一言島原先生が言うと

「藍!!」と言う男の人の声と女の人の声が聞こえて振り向くと三十代後半位のひとがこっちに来た。

俺たちに男の人が気づいたのか

「結城の父です。」と会釈して脇目も振らず結城を抱き締めている女性は

「藍を抱き締めているのが家内です。」

「失礼しました。私達は学校の教師の島原と西原と申します。」俺が答えると

「詳しい事は警察の方々に伺いました。すみませんが、今日も遅いですし、藍を休ませたいのですが…。」確かに。なんだかんだで今は10時を過ぎてる。

「分かりました。」そう言うと

「明日、丸一日休みを取ったので先生の都合の良い時間で構いません。」そう残して結城とご両親は帰っていった。

< 19 / 117 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop