敏腕社長に拾われました。
そっか、私、虎之助にキスしてもらいたかったんだ。
今眼の前にあるこの髪も、この目も、この唇も、虎之助の全部が愛おしい。虎之助に向って手を伸ばすとその手をグッと引かれ、両手で体を抱きしめられると虎之助の顔が耳元に埋められた。
「なあ智乃。なんで俺があのアパートを知ってたか、不思議じゃない?」
「あ……」
そうだった。なんか虎之助との展開が意外と進んでしまい、そのことをすっかり忘れていた。
どう思い返しても、私が虎之助に話したとは思えない。虎之助は私のことも知っていたみたいだし、そのあたりのことも詳しく知りたいと思っていたけれど。
こうもギュッと抱かれたままじゃ、虎之助の鼓動と熱さが伝わってきてそれどころじゃないというか体が疼いてしょうがない。
「虎之助?」
体を少し離し虎之助のことを見ると、彼も見つめ返してくれる。
「ん、何? そんな色っぽい目で見つめると、どうなっても知らないけど」
虎之助はイタズラっぽい目をすると、私の腰のあたりにある手をゆっくり上下に動かし始めた。
「い、色っぽい目なんてしてないし……」
虎之助の手の動きが気になって声が上ずる。恥ずかしくなって虎之助と合っていた目をそらすように顔を横に向けると、その顔を無理やり元に戻されてしまった。