敏腕社長に拾われました。
特に何も買うことなく雑貨屋を出ると、お肉が柔らかいと有名なステーキのお店へと向かう。
「ガッツリ食べてやる」
今晩から住まう家がなくなる私は、明日から粗食にしないといけない。だったら今日くらい、好きなものをお腹いっぱい食べたいじゃない。それに元気を取り戻すには、やっぱりスタミナを付けなくちゃ。
女一人でステーキハウスに入るなんて初めてのことで、ちょっと恥ずかしいけれど。今日だけは、そんなこと構っていられない。
フンフンと鼻息が聞こえそうな勢いで店まで行くと、入口の前で立ち止まる。週末の金曜日だからか、店の前には何組かの人が列を作っていて。
待つなんて想定外だったけれど。お肉を食べる気満々の私は、他の店に変更なんてありえないし。ここは素直に待とうと列の最後尾に並んだ。
私の前には、仲の良さそうなカップルが並んでいる。肩を寄せあって会話をしている姿を見ると、女性のほうが少し照れているようでなんとも微笑ましい。
でも今の私には、こんな光景も胸が痛かったりするわけで……。
人がいることも忘れて無意識に大きなため息をつくと、そのため息が聞こえたのか前にいた女性が振り向いた。