敏腕社長に拾われました。

店の中に入ると、当たり前のように一緒の席に座る。私の前には宮口さんと、宮口さんと一緒にいた男性。その男性と目が合うと、申し訳ない気持ちがこみ上げてきて頭を下げた。

「すみません。デートの邪魔をしてしまって」

「いや、そんなことは気にしなくていいよ。えっと君は……」

男性にそう言われて、まだ自分がどこの誰が言ってなかったことに気づく。

「あの、自己紹介が遅れました。私は早瀬智乃です。宮口さんと同じ会社で、秘書室に勤務しています。宮口さんにはいつも、お世話になっています」

「僕は小泉慎二です。朱音さんとはお見合いで……」

「慎二さんっ!」

その後も話を続けそうな小泉さんの口を、宮口さんが「もうそれ以上は話さないで」と押さえる。その光景がやっぱり微笑ましくて、心が少しだけ和む。

「お二人は仲がいいんですね」

「何言ってるの! あなたと社長だって仲がいいじゃない。だから今日は早く帰らせてあげたっていうのに、どういうこと? 一体何があったの? 早く話しなさい!」

宮口さんは怒っているのか、声を荒らげてまくし立てる。

「朱音さん、そんな一方的に食って掛からなくても。早瀬さん、困ってるじゃないか」

「食って掛かるなんて……」

宮口さんと小泉さんの間に、険悪ムードが流れる。

小泉さんが私をかばってくれたのは有難いけれど、私のことでふたりに喧嘩はしてほしくない。それに宮口さんはただ怒ってるわけじゃなくて、私のことを心配してくれているんだと思うから。

「小泉さん、ありがとうございます。でも……」

そこで言葉を止めると、宮口さんの顔をジッと見据えた。



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