敏腕社長に拾われました。
確かに虎之助と別れようと思って家を出てきたけれど、だからって虎之助のことを嫌いになったわけじゃないのに。
「宮口さんに、私の気持ちなんてわからないんですよっ!」
怒りが頂点に達し声を荒らげてそう言っても、宮口さんの顔は勝ち誇ったまま。
「あなたの気持ち? ええ、わからないわね。何をそんなに怒っているの?」
宮口さんの私を小馬鹿にしたような物言いに、私の中の何かがプツンと切れた。
「私がどれだけ虎之助のことを好きか、宮口さんは知ってるでしょ! 今でも大好きで大好きで……虎之助のことを誰よりも愛してるのに。諦めなきゃいけない私の気持ちなんて……私の気持ちなんて、誰にもわからないんですっ!!」
ここがステーキハウスの店内だということも忘れて大きな声で叫ぶと、鞄を持って立ち上がった。
「どこに行くの?」
宮口さんの冷たい声に振り返る。
「私がどこに行こうと、私の勝手です」
とは言ったものの、どこに行くあてがあるわけじゃない。でも怒りが突き抜けてしまった頭の中はは収拾できそうにないし、このままここにいたってまたお互い気分を害するだけだ。
「そうね、あなたの勝手ね。じゃあ私も、私の勝手にさせてもらうわ」
宮口さんはそう勝手なことを言うと、私の腕を掴む。痛みに私が顔を歪ませてもお構いなしに元の場所に戻すと、そこから逃げられないように隣の席にドカッと座り込んだ。