敏腕社長に拾われました。

「ねえ早瀬さん。あなたはまだ社長のことが好きなのに、なんで諦めないといけないわけ?」

「なんでって……」

そんなの簡単なこと。何度も言うように、詩織さんは綺麗だし財力もある。私なんかが虎之助の近くにいるより、きっと彼のためになるはず。好き嫌いなんて、一緒にいれば変わってくるもの。

変わってくる……。本当に?

私がいなくなって、虎之助の気持ちは本当に変わってしまう?

そんなの嫌だ……。

虎之助の前からいなくなる。そう自分で決めたことなのに、いつまで経ってもグジグジして。往生際悪いにも程がある。

俯きため息つきまくりの私を見て、宮口さんも呆れたようにため息をついた。

「早瀬さんはそれで、社長が幸せになれるとでも思っているの? 社長はあなたと結婚したいのよ。それが無くなって、どうして幸せになれるの?」

でもその口調はとても優しく、私を諭すようにゆっくりと紡がれていく。そして宮口さんは私の肩を掴むと、身体をそっと抱きしめた。

「いい、よく聞いて。誰がなんと言おうと、社長にはあなたが必要なの。そんなこと私が言わなくても、あなたが一番良く知ってるでしょ?」

優しく背中を擦られると、自然にコクンと頷いていた。

「だったら女社長のところに行って、ガツンと言ってやりなさい。『私は社長のそばから、絶対に離れません』ってね」

宮口さんは抱きしめていた私の体をゆっくり離すと、目に涙がいっぱい溜まっている私の顔を覗き込んだ。



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