敏腕社長に拾われました。
もちろん運転席から出てきたのは虎之助で、その顔は怒っている。
なんで虎之助が怒ってるの? 怒ってるのはこっちだっていうのに。
虎之助のことを無視して駅に向かおうとしても、目の前の大きな車が邪魔をする。
「もうっ面倒くさい」
後ろ側から回るために向きを変え車を避けて駅に向かおうとすると、「待て」と左手を取られた。
「離して」
虎之助の方を見ず冷たい声で言い放つと、背中側からため息がひとつ。
「大嫌いでも顔を見なくてもいい。でも頼むから、車に乗ってくれないか?」
うんと言うまで、この手は離さない──
握られた手に、ギュッと力が込められた。
繋がれた手から伝わる熱で、虎之助の気持ちがなんとなく伝わってくる。
握る手の力は強いのに気持ちはちょっと弱々しくて、反省してるのかな?なんて思えてきてしまう。
虎之助に引っ張られ何も言わずに助手席側へ向かうと、虎之助も黙ったままドアを開けてくれた。
その時ちらっと見えた虎之助の顔が嬉しそうで、許してあげてもいいかな……って思った私はちょっと甘い?
それでもすぐには虎之助の顔を見ることはできなくて、助手席に乗り込むと窓の外に目を向けた。