冷徹なカレは溺甘オオカミ
……って、なに考えてるんだ、わたし。

これ以上印南くんのことばかり考えてしまう自分がなんだかこわくて、思考を振り払うように息を吐いた。



「──で、柴咲さんどうだった? いきなりケーキ出てきたときの、印南の反応」



そんなからかい混じりの矢野さんのセリフに、わたしは努めて落ちついた声を返す。



「……どっからどう見てもいつも通りでしたよ。『驚いた』とは、言ってましたけど」

「マジか……どんだけ鉄仮面なんだよ……」



どうやらわたしのその報告は、たいそう矢野さんを落胆させてしまったらしい。

しょんぼり肩を落とすけど、それでもすぐに復活して、今度はなぜかやたら輝いた瞳でこぶしを握りしめる。



「でもな、あんなヤツだけど……付き合ってるうちに、なんかあの無表情がかわいく思えてくるんだよな。こう、いろいろ与えて反応を見たくなるっていうか」

「へえ……」



……そうか。だからこのひと、やたら印南くんに構ってるのか。

矢野さん、動物好きっぽいし。警戒心が強い猫をなつかせるのが得意です!みたいな。……アレこれ、なんかいろんな人に失礼?



「俺さ、思うんだよ……たぶん印南が全然笑ったりしないのって、きっと、昔何かトラウマになるようなことがあったんだよ。まだ小さい頃に、本当の親と生き別れたとか! 昔仲良くしてた友達が、自分の目の前で車に轢かれて命を落としてしまったとかさ……! 俺、実際本人には確かめられてないんだけど、きっとそう!!」

「……どうですかね……」



矢野さんの激しい妄想が炸裂したところで、エレベーターは目的の11階へと到着した。

やれやれと肩にバッグをかけ直すわたしの目の前で、機械的な音をたてながらドアが開いていく。
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