冷徹なカレは溺甘オオカミ
逆恨みした先輩社員にセクハラまがいの噂を流された、柴咲 柊華暗黒の新人時代(梶谷命名)。

会社を辞めようかどうか本気で悩んでいたあの頃、話を聞いてわたし以上に怒ってくれたのが、このふたりの同期だった。

新入社員ということもあり、さすがにいきなり先輩に楯突くわけにはいかず直接噂の出どころに突撃はできなかったけど……それでも、あのときのわたしにはただ話を聞いて自分の気持ちに同調してくれる仲間がいるというだけで、とても心強かったのだ。

今自分がこの場所にいられるのは、ふたりのおかげ。梶谷と梅野は、わたしが心を許せる数少ない友人だ。


……といっても、自分が今まで男性経験ゼロだという事実はさりげなく隠したまま、今日まで来てしまったりしているのだけど。



「あっ、梅野それ、俺が狙ってたやつ!」

「ふふん、早い者勝ちだっつーの。それより本当なの? 柴咲にイケメン年下彼氏ができたってのは」

「イケメンって……」



梶谷が箸を伸ばしかけたこんがりいい色なフライドポテトを横から奪いとり、咀嚼しながら梅野が首をかしげる。

わたしはというとなんと答えるべきか迷って、手持ち無沙汰にジョッキの持ち手をにぎにぎした。



「イケメンだろー印南は! なんかあの、よくドラマとかに出てる若い俳優に似てるよなー」

「なになに、誰に似てる??」

「ん~~このへんまで出かかってるんだけどな~~思い出せねぇな~~」

「チッ、使えねぇな梶谷」

「わーお久々に出たねぇ梅野の毒舌!! ねーさんカッコイイ!!」

「黙れチャラ男酷使してるそのブツ引っこ抜くぞ」

「きゃあコワイ!!!」
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