冷徹なカレは溺甘オオカミ
「なぁに、柴咲の彼氏くんって、全然嫉妬したりしない人なんだ?」

「まあ……そんなとこ」

「へーえ」



まあ実際、本当の彼女に対しては、どうだかわからないけど。

少なくとも、わたしに関することで印南くんがヤキモチ妬くなんてことは……ありえない、と思う。


次に注文する飲み物を決めて、店員さんを呼ぶ。

すぐに近づいてきた男性店員にハイボールをひとつ頼み、ついでに焼き鳥の盛り合わせも追加注文した。



「……わかってねーなあ、柴咲」



なんだか上から目線で梶谷がつぶやくから、反応して顔を向ける。

ちっちっちっ、と人差し指を軽く振った梶谷は、我が同期ながら腹の立つドヤ顔でわたしを流し見た。



「やっぱりおまえ、気づいてなかったんか」

「……なにが?」

「俺と印南が、握手したときさあ。表情こそ変わってなかったけど……やたら印南の手に、力が入ってたこと」

「、」



思いもよらないそのセリフに、一瞬息が詰まった。

片手でテーブルに頬杖をついた梶谷が、そんなわたしの様子を見てにやにやしている。



「あれさ、完全に嫉妬してたんだよ。俺が柴咲と仲良ーくしゃべってるもんだから」

「あらやだ、なかなかカワイイのね柴咲の彼氏」

「だろー? 俺もついにやけそうになるのこらえんの必死だったわ。いやぁ、なんでこうヒトの色恋沙汰っておもしろいのかねぇ」
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