冷徹なカレは溺甘オオカミ
「あは。柴咲、顔赤いよー」



右隣りに座っている梅野が、わたしの頭をちょっと乱暴に引き寄せてよしよしする。

彼女はとてもうれしそうに笑いながら、そのまま顔を覗き込んできた。



「なんか柴咲、変わったよね。前はもっと、ツンツンしてたっていうか、意地と見栄張ってクールぶってたけど」

「……そう?」

「うん。他の人の前より、あたしたちといるときのが気を許してくれてるのはわかってたけどさ……今の柴咲の方が、素を見せてくれてる感じがしてうれしい」



そう言って梅野が、アルコールで紅潮した頬を緩めてまた笑顔を見せる。

彼女の言葉に、思わずじーんと、目元が熱くなってしまった。



「梅野……」

「まぁな、本社行ったとき、俺もそれ感じてたけど。でもそれがいきなり出てきたアイツのおかげなのかと思ったら、なんかちょっと、悔しかったわー」



女ふたりが友情を深め合う傍ら、グラスをあおりながらたら~っと梶谷が話したセリフには、つい「……なにそれ」と間抜けな声がもれた。

畳に後ろ手をついて体重をかけ、なんともだらけきった格好だった梶谷が上体を起こし、にやりと笑う。



「柴咲が前より見栄張んなくなったのって、どーせ、あのイケメンのおかげなんだろ? 俺が異動した頃は、まだなんちゃってクールビューティだったもんな」

「………」



……『なんちゃって』って。まあ、実際そうなんだから文句も言えないけどさ。

ふたりが言うように、わたしは前と比べて、変わったのだろうか。

しかもそれが、印南くんのおかげ?
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