冷徹なカレは溺甘オオカミ
考えてしまったら、もう、ガマンがきかなくなってしまった。

アルコールを摂取した勢いもあって、わたしは自分の最寄り駅に降り立つと、改札を抜けてすぐにバッグからスマホを取り出す。



「………」



電話帳の、あ行。

マンションに向かって歩きつつも、今まで仕事でしかかけたことのなかったその名前を呼び出し、通話ボタンをタップする。


……1回。……2回。……3回。

4コール目で、ぷつりとコール音が途切れた。



《……もしもし?》



平坦な中にも、少しだけ、探るような声音。

わたしはつい、ふっと小さく笑みをこぼしてしまった。



《柴咲さん?》

「ああごめん印南くん、こんな時間に。まだ起きてた?」

《ええまあ、起きてましたけど》

「うん、そっかあ」



受話器ごしの印南くんの声を聞きながら、なんだか頭の中がふわふわしている。

自分でも思ってる以上に、わたしは今、酔ってしまっているみたいだ。

だからきっと、なんでか無性に彼の声が聞きたくなってしまった欲望のまま、後先考えずに電話なんてかけてしまった。



《柴咲さん、今外ですか?》



すぐ横の道路を通った、車の音が聞こえたのだろうか。

そんなことを彼に訊ねられ、わたしは相手に見えないとわかっていて、こくりとうなずいた。
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