冷徹なカレは溺甘オオカミ
密室??!!

印南くんに引っぱられるようにして歩きながら、わたしは思わず目を剥いた。


なんか、なんか……今の印南くん、いつもと雰囲気が違う。

普段は隙のない無表情のくせに、なぜか今は、明らかに眉を寄せて不機嫌な感じ。

え、なんで、どこが地雷? え、目が合わないって話、した直後だよね??

けど、それって、なんで──……。



「あれ、印南~!」



ちょうどエレベーターホールにさしかかったそのとき、不意に後方から声が届いて、わたしはとっさに背後からは死角になる壁の向こうへと身体を滑り込ませた。

……今の声は、システム課の石井さん! 話が長くて1回捕まったら面倒くさい人!

すぐさま思いあたって、この隙に逃げ出そうとする。

けれど察したらしい印南くんはわたしが振り払いかけた手をさらに強く握って、あっさりとそれを阻んだ。



「……逃がしませんよ」



妙に凄みのある目つきでわたしを見つめ、低くささやく。


……あの、こわいです印南サン(2回目)。


壁の向こうで固まるわたしの存在にはおそらく気づかないまま、足音が近づいた。

どうやら、印南くんを引き止めた人物はふたりいるらしい。

彼らが立ち止まる気配を感じ、わたしは印南くんに手を掴まれたまま壁にくっついて息をひそめた。
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