冷徹なカレは溺甘オオカミ
印南くんが小さく身体を揺らしたのが、息を飲んだわたしの左手に伝わった。



「……はい。そうですが」

「そうかぁ~~つーか印南、マジでおまえ大丈夫? 柴咲さんって美人だけど、いろいろ良くない噂あんじゃん」

「印南、うまいこと使われたりしてねぇよな?」



言葉とは裏腹な、笑い混じりの、石井さんと清田さんの声。

……きっと、このふたりはただの冗談のつもりで、こんなことを言っている。

けど実際、わたしには真相は違えど悪い噂はたしかにあって。

もしかして、冗談っぽく言いながらも、ふたりは本当に印南くんのことを心配しているのかも。



「──、」



……やっぱり、噂っていうのは、一度根付いちゃったらなかなか払拭されないものなんだなあ。

それに、この状況は自業自得だ。今までわたしは、自分のボロが出てしまうことがこわくて、必要以上に職場の人ともコミュニケーションをとってこなかったし。

きっとそんな調子だったから、噂だって、消えることなく次々と新しいものが生まれてしまっていたんだろう。

この評価は、自分のせい。今日まで自分が、見栄を張り続けた結果。


だから、だから──いちいち落ち込むな、わたし。
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