冷徹なカレは溺甘オオカミ
ツイてない日というのは、とことん良くないことが起きるものだ。

まずわたしは、今日が営業第1、第2グループ合同の飲み会だということをすっかり忘れていた。

華の金曜日。家でのんびり夜ふかししながら、恋愛小説で胸きゅんしようと思ってたのに……ハイまあ、これは自分の落ち度ですけど。


そして、現在。もうすぐ定時の17時半を迎えようという時分に、わたしは廊下の観葉植物を背にして固まっていた。

ここは、自動販売機やカフェスペース、喫煙所等が設置してある16階フロア。

18時半集合の飲み会までもうひとがんばりしようと、自動販売機を目当てについ先ほどやって来たのだ。

だけど目的の自販機にたどり着くより先、喫煙所横の壁際で談笑しているふたりの男性に気づき、とっさに身を隠した。


その男性ふたり組が自分と同じ九条物産の社員だというだけなら、普通に横を通り抜けることができた。

問題は、そのふたりが……どうやら、わたしの話題で盛り上がっているらしいということ。


あーもう、家から持参したタンブラーのお茶飲みきっちゃったから、のど渇いてんのに。

うんざりしながら、どうしたもんかと息を吐く。



「な、柴咲さんの『社長の愛人』って噂、本当だと思う?」



本当なわけあるか。痛い先輩が勝手に流した根も葉もない噂だっつうの。

そもそもその話も、広がった当初は『常務の愛人』って噂だったような……わーお、わたし出世してんじゃん。愛人レベル昇格だぜ!




「さーなあ。でもま、そういう話出るくらいなんだから、怪しい現場とか誰かに見られてるんじゃね? 一緒にホテルから出てきたとか」

「おー!」



ホテルって……! そういうホテルは一度も行ったことありませんけど! 未知の領域だわ!

何度も言うようだけど、わたし未だに、バージン貫いてますからね!
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