冷徹なカレは溺甘オオカミ
……ああ、だめだ。

だめなのに、久しぶりの体温が、心地良い。



「っん、は……っ」

「……柴咲さんは、キス、下手くそですよね」



仕方ないでしょ! わたしがキスを覚えたのは、こないだの“業務命令”のときが初めてだったんだから!!

呼吸の合間でつぶやかれたセリフに、そうやって怒鳴りつけてやりたいけど。

彼が好き勝手わたしのくちびるを堪能しているから、思うように話すこともできない。


とっくにわたしの口内に侵入を果たしていた印南くんの舌先が上あごを撫で、思わず身震いしながら彼の腕にしがみついた。

すると印南くんは、少しだけくちびるを離して、ささやく。



「……やべ。止まんない」



いつもわたしに対して使う敬語じゃない、おそらく素の彼の言葉に、きゅんと胸がときめいた。

ぺろりと、下くちびるを舐められる。それに肩をすくめた瞬間、急に身体が浮く感覚がしてとっさに目を見開いた。



「きゃ……っ」



浮遊感の正体は、印南くんがわたしの身体を持ち上げて、テーブルに腰かけさせたせい。

さっきまでと違う構図に目を白黒させるわたしを見下ろし、ふっと彼が口角を上げる。



「この体勢、いいですね。めちゃくちゃエロい」

「なっ、」

「こういうのが、社内恋愛の醍醐味なんですかね。ひとけのない会議室のテーブルで押し倒して、肝心な部分だけはだけさせてやっちゃうとか」
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