冷徹なカレは溺甘オオカミ
「、ちょ、」

「本当に、意地っぱりですよ、あなたは」



片手は腰に、もう片方の手は後頭部にまわされ、しっかり抱きしめられたその体勢のまま、頭上でため息が聞こえる。

あ、呆れられとる……。ショックを受けるのと同時に若干ムッとしたわたしは、彼の胸を押して拘束から逃れようとした。



「も、もういいでしょ。離して……」

「離しません」



予想以上にはっきり断られて、身体中の動きを止めてしまった。

それを幸いとばかりに、彼はわたしの耳元で吐息まじりにささやく。



「それにしても。ここまでしてるのに、口を割らないなんて……」

「な、なに」



ドギマギしつつも、平静を装って返した。

ほとんどわたしの耳にくちびるをつけながら、印南くんが小さく笑う。



「もしかして、柴咲さん。さっき俺が言ったこと、実は期待してますか?」

「ッ、そ──」



そんなわけない、と言おうとして顔を上げた瞬間。

薄く開けたくちびるに、彼が噛みついてきた。



「……ッ、」



反射的に逃げようとした後頭部は大きな手が添えられていて、むしろ彼の方へと引き寄せられる。

その分キスが深くなって、わたしはぎゅっと目をつぶった。
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