冷徹なカレは溺甘オオカミ
「……うぅ……」



到着した駅から外に出ながら、まわりに聞こえない音量で小さくうめく。


と、とりあえず、今日のお昼は印南くんと一緒なことが確実なんだ。

外に行きましょうかって言ってたけど、どこのお店に行くつもりなんだろう。もしかして、また用意周到に予約してたりするのかな。……それはないか。しょせん平日のランチだし。

なんにしても、彼と一緒にいられるのは、うれしい。その気持ちはたしかだから、うれしいその感情のまま、緩む口元を引きしめつつ顔を上げると。



「(……あ、)」



前方に、見覚えのある背筋が伸びた後ろ姿。

印南くん、だ。


自分で考えたことなのに、名前を思い浮かべただけでドキンと胸が高鳴る。

なにこれ、わたし、恋するオトメっぽい。いや、年齢的にその表現はアリなの?

些細なことに一喜一憂したり自問自答したりして、自分でも、遅れてきた初恋をこじらせてる感は否めない。

それでも、自分じゃコントロールできそうもなく。とりあえず今は、さりげなく印南くんに挨拶をして合流しようかと、足を早めかけたそのとき。



「ダイくーん!」



そんなセリフとともに誰かが背後からわたしの横を駆け抜けたから、ふわりと風が吹いた。

つられて見つめた先には、ふわふわのボブを揺らして走る背の低い女の子の後ろ姿。

彼女はそのままの勢いで印南くんの肩を叩いて立ち止まり、それに驚いたらしい彼が振り返る。
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