冷徹なカレは溺甘オオカミ
苦しい。ツラい。

でも、こんなわたしを慰めてくれるような存在は、いない。

それは、自分が蒔いた種。今までずっと、偽った自分で生きてきたわたしの代償なのだ。


身体の両脇にぶら下げた両手が、ぶるぶると震えている。

浮かんでくる涙を落ち着かせるために、何度か深呼吸を繰り返した。


……もういいや、自販機は。飲み会まで我慢しよ。

なんとか涙腺をロックすることに成功したわたしは、目じりに溜まったしょっぱいしずくを拭う。

なんかもう、本格的に飲み会うぇーい!なんて気分じゃなくなってるけど……もういっそ、今日は思いっきり飲んで憂さ晴らししてやるわちくしょう……!


都合よく下りのエレベーターが来たので、さっさと乗り込む。

【11】のボタンを押してから、わたしはふらりと壁に背中をつけた。


……そういえば、噂の元凶なあの先輩も、わたしの顔見て惚れたとか抜かしてたっけ。

ばーか、わたしは顔だけ女なんだよ! 顔だけ見て付き合ったって、中身がつまんないからきっとすぐ別れたくなるんだからなばーか!!

……ああ、自分で考えといてへこむわ。


マジでわたし、一生このままなのかな。変な見栄ばっかり張って、本当の自分なんて出せずに、独り身のままかな。

……さっきの、噂とか。こんだけ嫌な思いしてても、結局“美人な柴咲 柊華”を演じることは捨てられないわたし。あー、ほんと、ばかだなあ。


久々に、がっつりネガティブ発動。でも今ここには、つっこんでくれる姉や弟の姿はない。

自分ひとりきりの空間で、はあっと、深いため息を吐いた。
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