冷徹なカレは溺甘オオカミ
「わー、綺麗なバラ! 柴咲さん、自分で買ってきたんですか?」



言いながらちょんと花びらに触れた彼女が、無邪気に訊ねてくる。

一瞬反応に困ってから、答えた。



「……違うわ。ちょっと、もらいもので」

「へぇ~今日は、クリスマスイヴですもんねぇ。柴咲さん、バラすごくお似合いです」

「ありがとう」



つい苦笑がもれてしまったにも関わらず、森さんは感心したような表情で納得している。

そういえば、今日はクリスマスイヴだった。独り身の自分にはあまり関係のないイベントだから、すっかり無頓着になってしまっている。


……『お似合い』、か。まさかそんな理由で、この花の差出人は、わたしの家の郵便受けに無言でバラを入れ続けているのだろうか。

自分が考えたことにひやりと寒気がして、わたしは思わずカーディガンの上から自分の両腕をこする。


だめだめ、考えないようにしよう。人違いって線も、ありえなくはないわけだし。

内心自分に言い聞かせるようにしていたら、ふと、視線を感じて何気なく顔を向けた。

一瞬だけ交わった視線は、だけどすぐに、相手側から無言で逸らされる。



「………」



今……印南くん、わたしのこと、見てた?

そう考えただけで、じわりと体温が上がってしまったような気がする。

けれどもきっと偶然に違いないと、熱を冷ますように小さく息を吐いて。

再びわたしは、パソコンへと向き直ったのだった。
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