冷徹なカレは溺甘オオカミ
「……やっぱり、そうなんですね」



無言のわたしを見て、彼は肯定だと受け取ったらしい。

少しだけ、掴まれた手首に力がこもった。



「柴咲さん、それは、警察に通報するべきです。今日が初めて、というわけではないんでしょう?」

「……そうだけど。でも、警察は大げさなんじゃ」

「甘いです。何かあってからじゃ、遅いんですよ」



また彼の手の力が強くなったから、ぴくっと指先が反応してしまう。


……わざわざ、エレベーターの中で引き止められて。

こんなこと言われるなんて、思ってもみなかった。



「……そもそも、あのバラが本当にわたし宛てなのかもあやしいし。きっとそのうち、来なくな──」

「聞いてください。あなたが心配だから、言ってるんです」



真剣な声音で諭されて、カッと頬に熱が集まった。


……なんで。なんでなんでなんで。

なんできみは、そんなふうに、わたしにやさしくするの?



「や、めて……」



うつむいたまま、小さく首を横に振る。



「やめて、印南くん。もう、わたしに関わらないで」

「柴咲さん、」

「もうやだ、もう、なんで、こんな……っ」
< 209 / 262 >

この作品をシェア

pagetop