冷徹なカレは溺甘オオカミ
お酒は好きだけど、飲んだら飲んだ分だけ律儀に酔っ払うわたし。

だからいつもは、会社の飲み会となるとちゃんとセーブしてるんだけど……。



「柴咲さん、大丈夫ですか? 足元ふらついてますよ」

「ん、大丈夫よ」



会社では斜め前のデスクに座っている後輩女子・森さんが、心配そうに声をかけてくれる。

わたしは小さく微笑んで、そんな彼女の言葉をやんわりと跳ねのけた。


営業グループの飲み会はつい先ほどお開きになって、今はぞろぞろと居酒屋を出たところだ。

どうやらこの後、第2グループの山田部長いきつけのバーで二次会を予定しているらしく。
「柴咲さんもどう?」と、同じく第2グループの先輩男性社員が訊ねてくる。

曖昧に笑って、顔の前で両手のひらを向けた。



「すみません、わたし今日はもう……実は明日、朝から予定があるので」

「そっかー、残念」



そう言ってくれた先輩に、もう一度謝罪のセリフを口にする。

そのまま、まわりの同僚たちに「お疲れさまです」と声をかけながら、さりげなく輪の中を抜けた。



「あれ、柴咲さん帰るの? ひとりじゃ危ないでしょ」



こっそり集団に背中を向けようとしたわたしに、後ろから声がかかる。

振り返れば、そこにいたのは同じ第1グループでふたつ年上の矢野さんだ。

彼はよく印南くんに絡んでいて、今もその隣りには、無表情で有能な後輩の姿がある。



「大丈夫ですよ。酔い覚ましにちょっと歩いてから、タクシー拾います」



わたしは軽くそう言って、サイドの髪を耳にかけながら小さく会釈した。

今度は引きとめられないよう、さっさと踵を返してパンプスを動かす。
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