冷徹なカレは溺甘オオカミ
◇ ◇ ◇
「なんか柴咲さん、今日顔色悪くない?」
矢野さんにそんな言葉をかけられたのは、昼前のオフィスでのこと。
まじまじとわたしの顔を見つめてくる視線から逃げるように、曖昧に笑ってみせる。
「そうですか? まあちょっと、風邪気味で」
「クリスマスだっつーのに風邪かあ~? お大事にな」
軽ーい調子で言って、矢野さんはコピー機の方へと足を向けた。
それを横目で確認し、わたしはひそかにため息を吐く。
……今のわたしの顔色が悪いと言うのなら、それはおそらく、今日の朝の出来事が原因だ。
今朝出勤のためにマンションの部屋を出たわたしは、階段を降りきったところにある集合ポストの前で一度足を止めた。
……昨日の今日だし、期待はしてないけど。
でも、一応、念のため。
そんなことを頭の中で考えて、自分の部屋番号【203】の郵便受けを開ける。
銀色の箱の中には、ぽつん、と紙きれが1枚あるだけ。
──ああ、やっぱり。そんなにすぐ、反応なんてないよね。
その紙を昨日自分が置いたものだと思ったわたしは、落胆半分安心半分な気持ちで、郵便受けを閉めようと手を伸ばしかけて。
だけどその手が届く前に、びくりと動きを止めた。
郵便受けの中にあるのは、たしかに昨日、わたしが手帳から破った紙きれ。
そこに書かれている文字が、自分の書いたものと、違っていたのだ。