冷徹なカレは溺甘オオカミ
仕事終わりの更衣室。時刻は18時半すぎ。
わたしは自分のロッカーの前で、スマホを片手に立ち尽くしていた。
今日は、厄日なのだろうか。
まずお姉ちゃんは、彼氏の拓人さんと一緒に近場の温泉地へ旅行中。
颯真にいたっては、大学にこもっているのかいつもの飲み会中なのか、昼間送ったメールに対する返信すらない。
深くため息を吐きながら、わたしはロッカーの扉を閉めた。
……こうなったら仕方ない。今日はとっとと家に帰って、とっとと寝てしまおう。
大丈夫。人通りの多い道を通って、戸締まりをちゃんとして、お気に入りの恋愛小説で癒されてからあたたかいふとんにくるまれて眠れば、大丈夫。
自分に言い聞かせながらも、沈んだ気持ちで会社を出る。
オフィス内を横切ったとき、何気なく自分のデスクのあたりを見ると、すでに印南くんの姿はなくなっていた。
どうやら、わたしが更衣室でまごついている間に先に帰ってしまったみたいだ。
「(ばか。なに、期待してるの……)」
思考を打ち消すように、小さくかぶりを振る。
自分の不安を解消するために彼を利用しようだなんて、図々しいにもほどがあるだろう。
それに、昨日わたしのことを心配してくれた彼を突き放したのは、自分自身だ。今さら、何をしてもらおうっていうの。
今日はクリスマスで、街はどことなく浮かれた雰囲気。
けれどわたしはちっとも楽しい気分になれないまま、家路を急いだ。