冷徹なカレは溺甘オオカミ
「危ないですよ、こんなところでうずくまってたら」



……わーお。

なぜこんなところに、無表情メンズ印南氏が!



「……印南くん、二次会は……」

「柴咲さんがふらついていたのが気になったので、追いかけてきました」



言いながら、彼が目の前に片ひざをついた。

わたしの肩に手を添えて、顔を覗きこんでくる。



「とりあえず、そこに座りましょうか」

「………」



身体を支えてくれる印南くんに誘導され、わたしはすぐ横にあったオフィスビルの花壇のふちに腰をおろした。

……印南くん、わざわざ追いかけて来てくれたのか。

こんなところを見られてしまったのはものすごく不本意で、恥ずかしいけれど。

それでも、彼が自分のことを気にかけてくれたという点を考えると、うれしく思ってしまう。

これも、酔っ払ってるせいかな。



「あり、がとう。印南くん」



たどたどしくお礼を言えば、見上げた先の彼はいつものように小さく首をかしげて「いいえ」とつぶやいた。

こんなときでも無表情な彼は、そのままわたしの右隣りに腰をおろす。

それから、座っているわたしの体勢が、不安定に感じたのだろうか。

印南くんは軽くわたしの頭を押して、自分の左腕に寄りかからせた。

きっとシラフの状態なら、男の人にそんなことをされたとたん「わあああああ!!」なんて悲鳴をあげたあげく、相手を突き飛ばしていただろう。

だけど今の自分はされるがまま、素直にその腕に頭を預ける。
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