冷徹なカレは溺甘オオカミ
驚きに目を見開くと同時に、カッと体温が上昇した気がした。

真っ赤になっているわたしは、それだけで、彼に質問の答えを告げてしまっている。



「な、なんで……そんな、こと……」

「言ってください、柊華さん」



きっともう答えなんてわかっているだろうに、あくまでわたしからの言葉を促す印南くん。


だめだ。この想いは、露呈してはいけないものだ。

だって彼には、婚約者がいるのに。


そう考えると、自分の横恋慕なんてとても口にできなくて。

もはや涙目になっているわたしは、それでも彼の手から逃れられないまま、ふるふると首を横に振った。



「や、やだ、言わない」

「どうして? 俺は、聞きたいです」

「いやだ、……ひ、ひどい、印南くん」



頑なに口をつぐむわたしの耳にほとんどくちびるをくっつけるようにして、彼はささやく。

どうせ気持ちに応えられないくせに、そうやって恋心を暴こうとするなんて、ひどい。

ひどいと思うのに、今この瞬間も、わたしの彼への想いはどんどんふくらんでいる。


もう、必死で気持ちを押さえつけていた蓋なんて、意味がない。



「いいんですよ、口にしても」

「……ッ、」

「言って、柊華さん」



吐息混じりにつぶやいて、印南くんの右手がわたしの頬を撫でた。

ぎゅっときつく目を瞑ると、一筋の涙が伝い落ちる。

その雫を指先でやさしく拭われる感覚がして、またゆるやかにまぶたを開けた。
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