冷徹なカレは溺甘オオカミ
「ずっと、こうやって触れたかったんです。業務命令とか、偽の恋人じゃなく。ちゃんと想いが通じ合った柊華さんに、触れたかった」

「だいちくん、」

「だから、もう抑えません。──あなたは、俺のものだ」



わたしの涙がこぼれ落ちる前に、くちびるを塞がれた。

甘くて熱くて、激しいキス。簡単に舌も絡めとられて、呼吸すらうまくできない。



「ん……っふ、あ、」

「ふ、そのカオ。すごくそそります」



吐息まじりにささやいて、そのまま耳をぺろりと舐められた。

次第に、呼吸が荒くなっていく。彼と交わすキスも落とされる言葉も全部が恥ずかしくて仕方ないわたしは、それを隠すようにわざと悪態をついた。



「う、……前にキス下手くそって、言ったくせに」

「それはまあ、追い追い調教していくとして」



調教ってなに??!!と思わずツッコミを入れてしまうよりも先に、大智くんは淡々と続ける。



「大丈夫。柊華さんは才能がありますから」

「才能?」

「はい。俺に触れられて、気持ち良くなる才能です」



唖然とするわたしを気にもとめず、ちゅっと左のまぶたに口づけた大智くん。


……ああ、もう。

これ以上ないってくらい顔が熱くなってしまったわたしは、せめて彼に見られまいと、両手で顔を覆った。


偽恋人でも、本当の恋人になっても。結局わたしは、この年下無表情男子に敵わない宿命なんだ。

でも、それでいい。見掛け倒しで実はヘタレで、それでもこんなわたしをすきだと言ってくれるこのひとを、世界一大切にしたいと思う。



「柊華さん、顔見せて」

「………」



甘くささやかれ、羞恥心を耐えながらそっと手を退けた。

目が合った彼はやはり、とてもうれしそうに笑っていて。



「ほんと、かわいくて仕方ないな」



照れるよりも先に、またキスの雨が降ってくる。


大智くん、すき。だいすき。

俺も。もう、我慢しないから。


何度も気持ちを確かめ合いながら、わたしたちは、今までのすれ違いを埋めるようにきつく抱きしめ合った。
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