冷徹なカレは溺甘オオカミ
「え、あの、大智くん」

「なんですか?」



というかさっき俺のこと苗字で呼んでましたよね?と、まるでそのことをたしなめるように胸のふくらみへ噛みつかれた。

小さく悲鳴をあげたわたしは、あわてて自分の胸元にいる彼を見下ろす。



「こ、こら、どこ触ってんの!」

「昨日も散々触ったところですよ」



そういうことじゃなくて!というツッコミは、もれかけた声を抑えようととっさに下くちびるを噛みしめたせいで、叶わなかった。

首筋にキスをする彼を押しのけてやりたいのに、両手をベッドに固定されていてそれもできない。



「んっ、わ、たし、もう起きてシャワー浴びたいし、」

「シャワーなら、ゆうべ一緒に浴びたでしょう」

「で、でも、その後また……っ」

「『また』、なんですか?」



言いたいことはわかってるくせに、わざと彼は意地悪く訊ねてきた。

恥ずかしすぎて、続きなんて言えるわけない。

言葉に詰まるわたしをよそに、大智くんは太ももをまさぐりつつ鎖骨に歯をたてる。



「っあ、」

「さわやかな朝に、柊華さんのいやらしい声。最高ですね」

「ほんともうきみはどうしようもないな!」



ゆうべのとろける笑顔や熱っぽい口調は、もしや夢だったんじゃないか。

現実逃避気味にそう思ってしまうくらい、今朝の彼は無表情の通常運転だ。


それでも、どちらの彼に対してだって同じようにときめいてしまうんだから、わたしももう、どうしようもない。



「まだ、昨日のダメージ残ってるから……っ」

「それを補って余るくらい俺も下の俺も超元気です」

「最低な下ネタだ……!」



わたしのささやかな抵抗なんて、もはやなんの意味もなさなかった。

大智くんの手にかかり、のどかな朝の風景はそれからあっという間に官能の世界へ。

けれども彼に触れられた身体は、素直に悦んで。あまり時間をかけずに、わたしはあっさりと陥落したのだった。
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