冷徹なカレは溺甘オオカミ
「こんなはずじゃなかった……」



すでに、太陽の位置は真上だ。風があまりないおかげで、12月にしてはあたたかく感じる。

右手は大智くんの左手と絡め、並んで道を歩きながら、わたしはだるい腰をさすって白いため息を吐いた。



「俺は、朝も夜もイケるクチなんで。慣れてください」

「なんかそれ違う……」



結局あの後、午前中いっぱいをベッドの上で過ごしたわたしたちは、彼の家の近くにあるというおいしいパン屋さんに向かっている途中だ。

イートインスペースもあるというそのお店、鈴音さんが教えてくれたんだって。彼女はおいしい食べ物屋の情報に非常に敏感らしい。



「夜は、どこかいいお店でディナーにしましょうか。食べたいもの、考えといてください」

「うん。ありがとう」



別にそんな気をまわしてもらわなくてもいいのに、とは思うけど、彼の言葉は素直にうれしいのでうなずいておく。

生まれて初めて、恋人に誕生日を祝ってもらえるんだ。こんなに楽しみで素敵なことってない。

彼とつないだ手に、自然と力がこもる。



「……大智くん、すきだよ」

「俺だって、だいすきです」



気持ちを伝えると、あたりまえに視線を向けて、同じ気持ちを返してくれる。

奇跡みたいなこの瞬間が、泣きたいくらいうれしくて。

それでもこのしあわせにいつか終わりが来てしまうんじゃないかと怯えるわたしは、つい、彼を試すようなことを言ってしまう。
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