冷徹なカレは溺甘オオカミ
答えながらもさらりと放たれたとんでもない言葉に、つい顔が熱くなる。

……肉体的な意味でって。無表情で、よくそんなこと言えるなこのヒト……。

メニューで赤い顔を隠すようにしながら、ちらりと印南くんを盗み見た。

手元にあるメニューに視線を落としているせいで、長いまつ毛が目元に影を作っている。

うーん、いきなりのセクハラ発言にはびっくりしたけど。やっぱり客観的にはイケメンだわ、印南氏。



「柴咲さん、決まりました?」



不意に顔をあげた彼と視線が交わって、ドキッと心臓がはねる。

ま、まずいぞわたし、普通にときめいてしまっている……!



「え、えーっと、待ってね」



内心の動揺をごまかすようにそう言って、あわててメニュー表に意識を向ける。

さっき印南くんが話した通り、メニューに載っている写真はどれもおいしそうで、そして意外とリーズナブル。

オーダーするものを真剣に吟味するわたしに、印南くんがスッと手を伸ばしてきた。



「ちなみに俺のオススメはBコースです。パスタとハーフピザとサラダとスープとスイーツのセット。パスタとピザは自分で好きなものを選べますよ」



彼が指さした部分を見てみれば、たしかにそこには魅力的なセットメニューが。

わたしはあっという間に、心を決めた。



「ん、じゃあ、それにする」

「それから、せっかくなのでアルコール頼みますか? このへんのスプマンテとか」



わたしの手元にあるメニューを向かい側から捲って、アルコールメニューのページを開く。

少しだけ驚きながら、わたしは顔をあげた。
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