冷徹なカレは溺甘オオカミ
もしかして印南くん、この後のことに関して実は結構ノリノリなの? それとも思わず鬼畜発言をしてしまうほど面倒くさがってるの?

……わからない。いつもと変わらない無表情だから、何を考えているのか全然わからない。



「とりあえず、Bコースをふたり分ですね。アルコールはスプマンテでいいですか? アスティなら度数もそんなに高くないですし」

「……おまかせします……」



結局、支払いの件は押し切られる形になりそうだ。これ以上何か言っても、この後輩くんにはうまくかわされる気がする。

ほどなくして現れたウェイターにオーダーを伝えて、おいしそうな料理たちが運ばれてきた。


わたしはワタリガニのクリームパスタとマルゲリータで、印南くんはトマトソースたっぷりボロネーゼにサーモンのクリームピザだ。

まずは、マスカットのフルーティな香りがただようスプマンテのグラスで乾杯。

ピザはお互いにシェアしたけど、どれもすっごくおいしい。ひとりでもまた絶対来よう、と、印南くんからもらったクリームピザを咀嚼しながらこっそり考える。


お酒の力もあったのか、彼とはその後ずっとスムーズに会話ができた。

というか、前にも思ったことだけど……印南くんが、意外と話しやすい人っていうおかげも、あるかもしれない。

普段の無表情があるから、勝手に口数少ない人って、決めつけちゃってたんだな。

自分だって見た目のイメージに振り回されてるのに、わたし、悪いことしてたなあ。
< 45 / 262 >

この作品をシェア

pagetop