冷徹なカレは溺甘オオカミ
ガチャ、とドアが開く音がして、つい身体が小さく揺れた。

近づいてくる足音に顔をあげてみれば、上半身裸にスラックスを履いた格好の印南くんが、肩にバスタオルをかけたままこちらへと歩いてくるところで。



「……ッ、」



普段は隠されている、男の人の、素肌。

そんなもの見慣れていないわたしは、彼の姿を見た瞬間、カッと頬が熱くなってしまった。


まっすぐに、わたしのいる寝室へと入ってきた印南くん。

そのままためらいもなく、ベッド上のわたしの隣りに腰をおろした。

スプリングが軋んで、彼の体重分、マットが沈む。
 


「柴咲さんは、寝るときパジャマ派なんですね」



今日はいい天気ですね、なんて世間話をするような調子で、彼が言った。

ひざの上で両手を無意味にもじもじさせつつ、決して印南くんと視線を合わせられないまま答える。



「あ、うん……えっと、変、だったかな」



今わたしが着ているのは、リバティプリントの暖色系のパジャマだ。
コットン100%で、襟のついた一般的な形のパジャマ。

きっと、これがホテルだったりしたら、シャワーの後白いバスローブを着たりするのだろう。

だけどうちに、そんな気のきいたものは置いていないし。

だから少し迷った末、下着を身につけた上に普段使っているパジャマを着たんだけど……。


今になってこれでよかったのかと若干不安になるわたしに、印南くんはあっさり言った。
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