冷徹なカレは溺甘オオカミ
「いえ、いいと思いますけど。俺としては、スウェットよりTシャツより、パジャマの方が脱がせるのは楽しいですし」

「……そうですか……」

「はい」



なんだかもう、そのうち壊れてしまうんじゃないかってくらい、心臓が激しく動いている。

……きっと、今のわたしの顔、真っ赤なんだろうな。


おそるおそる、意を決して、わたしは彼と身体を向き合わせた。

すると思いがけなく熱く自分を見下ろす瞳と視線が絡んで、息が詰まる。



「……ッ、」



印南くんの、裸のカラダ。

なめらかで、ちゃんと筋肉もあって、バランスがよくて。


……ああ、もう、どうにかなってしまいそうだ。



「っい、なみくん、エアコンつける? そのままじゃ風邪ひいちゃう」



彼の素肌から視線を逸らして、枕元のリモコンに手を伸ばそうとした。

だけど、それは叶わない。

伸ばしかけた左手は、自分のものよりも大きな手のひらに、あっさり捕まってしまったから。



「──大丈夫」



どくんと、痛いくらいに鼓動が高鳴る。

わたしの手首を掴んでまっすぐに見つめたまま、彼がささやいた。



「今、熱くなるから」



その言葉の意味を理解する前に、印南くんの整った顔が迫ってきて。

あっという間に、わたしのくちびるは彼のそれと重なっていた。



「、」



──ああ、これってわたし、ファーストキス、だ。

頭の片隅で思った瞬間、触れるだけだったそれが一度離れる。

だけどすぐにまた、今度はさっきよりも角度をつけて、くちびる同士が合わさった。
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