冷徹なカレは溺甘オオカミ
最初の触れるだけのキスの間、わたしは驚きのせいで。

そして彼はたぶん、こちらの反応をうかがうためか、お互い目を開けたままだった。


二度目にくちびるが重なった瞬間、わたしはぎゅっと目を閉じる。

数秒前はわからなかった印南くんのくちびるのあたたかさややわらかさが伝わって、ますます頭が混乱した。



「……っん、」



さっきのものより、ずっと深くて、熱いキス。

何度も何度も角度を変えて、印南くんはわたしのくちびるを好き勝手に味わう。

いつの間にか彼の片手が、わたしの後頭部に添えられている。

もう片方の手は、頬をやさしく包んでいた。



「柴咲さん、息してますか?」



一瞬できたキスの隙間で、印南くんがささやく。


……できてないよ! どうやって息つぎすればいいのよ!

ぐるぐると頭の中で文句は渦巻くのに、この状況にいっぱいいっぱいなわたしは、再びくちびるを塞がれたことでまた簡単に意識を持っていかれてしまった。



「ふ……っあ、」



彼の舌が執拗にくちびるをなぞるから、おそるおそる口を開けてみた、ら。

あっという間にわたしの舌を絡めとられて、信じられないくらいまたキスが深くなった。


もう、もう、なにこれ。

頭ぼーっとするし、なんか勝手に変な声出ちゃって恥ずかしいし。なのに気持ちいいとか、思っちゃってるし。

たぶんこれ、わたしにとってはまだセカンドキスなのに。こんなにやらしくて、だけど夢中になっちゃって、どうしよう。
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