冷徹なカレは溺甘オオカミ
「柊華さん」



──ああ、熱い。

彼と触れ合っているところから、熱が侵食して。このままどろどろと溶けだしてしまうんじゃないかと、思ってしまう。



「……っ、だいち、くん」



言われるがまま互いの服を脱がし合って、普段は絶対に呼ばない名前で相手を呼びながら、何度となくキスを交わす。


──どうしよう、わたし、ハジメテなのに。

こんなに気持ちよくなっちゃって、恥ずかしい。


熱にうかされながら、うわ言のようにこぼれ出る。

それを聞いた印南くんは、舌と歯でいやらしくわたしの左耳をいたぶりながら、ささやいた。



「かわいい、柊華さん。気持ちいいことに素直なひとは、好きですよ」



低くて甘い声を耳から直接脳に流し込まれて、否が応にも体温が上がる。

次々とわたしに快楽を教えて乱れさせながら、印南くん自身も、ちゃんと興奮してくれているんだとわかった。

だって今、こんなにも、わたしに触れる彼の手が熱い。



「そのやらしいカオ、俺以外の男は見たことがないんだと思うと、ゾクゾクしますね」

「ぅ……そんな、こと……っ言わない、で」



印南くんのいたずらな手が、するりと内腿を撫でた。

背をそらして喘ぎながら、合間に何度も彼の名前を呼ぶと、印南くんがちょっと切羽詰まったような声で、またささやく。



「……いい子ですね。そのまま、気持ちいいところだけに集中していてください」



うなずいて、目の前にいる人物以外のものを感じないようにと、ゆっくりまぶたをおろす。

あとはもう、彼が見せる甘い夢に、溺れていくだけだった。
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