冷徹なカレは溺甘オオカミ
「柴咲さん、身体は大丈夫ですか?」



寝室を出ながらのあけすけな質問に、頬が熱くなる。

それがバレないよう、わざとツンとした声で答えた。



「……ご心配なく。へーきです」

「痛みが最小限になるようにできるだけ手は尽くしましたけど、やはりハジメテの女性側の苦痛というのは避けられな」

「いい、いーから、それ以上言わないで」



淡々と語られる言葉たちをさえぎって、彼から視線を逸らす。

彼いわく『手を尽くした』内容については、とてもじゃないけど恥ずかしくて口にはできないようなことだったりするわけで。

それを思い出してしまったわたしは、ますます顔に熱が集まるのを止められない。



「それじゃあ、」

「……うん」



玄関で革靴を履いた印南くんが、わたしを振り返る。



「俺が外に出たら、すぐに鍵をかけてください。チェーンもです」

「わかった」

「それから、今は家の中だからいいですけど、くれぐれもそんな悩ましい格好で出歩いたりしないでくださいよ」

「そんなことしません」



なんだきみ、お父さんか。

過保護な彼の言葉にそんなことを考えてしまって、ふふっと思わず笑みがもれた。

もしかしたら印南くん、実は結構心配症なのかもしれないな。

顔に似合わず、かわいいとこあるじゃない。
< 60 / 262 >

この作品をシェア

pagetop