冷徹なカレは溺甘オオカミ
キッチンにあるプリンを取りに腰を浮かしかけたお姉ちゃんと、スプーンを咥えた颯真が、きょとん顔でまた同時にわたしを見る。

テーブルにグラスを置いたわたしはその視線を受けて、すぅっと息を吸った。



「その……彼氏では、ないんだけどね? とりあえず、バージンを貰ってもらった、というか……」

「……瑛奈、なんか柊華がこわいこと言ってるぞ」

「やだぁあたし、ホラーは苦手なのにぃ~」

「気持ちはわかるけど……! とりあえず聞け……!」



自由な性格のこのふたりを宥めるのは、昔からわたしの仕事だ。

けど今は、こっちだってあまり余裕はない。

わたしが本気で言っていることが伝わったのか、スプーンを口から離した颯真が呆れ顔で頬杖をつく。



「……『貰ってもらった』ってなに。まさかワンナイトラブ的な? 酒に酔った勢いでその日初めて会った人と的な?」

「う、それは違う……」

「じゃあなに、友達だったヤツ?」



けどおまえ友達少ないよなー、という余計なひとことはさておき、ボソボソとわたしは答える。



「……同じ会社の、後輩くん」

「会社の人?! やーん、オフィスラブぅ~!!」

「瑛奈、ラブはねーから」



なぜか急にテンションを上げてきたお姉ちゃんに呆れ声でつっこんで、颯真はさらに尋問を続けた。



「それって、いつの話?」



う、と一瞬、言葉に詰まる。



「……おととい。金曜日の、夜」

「うわ~~生々し~~い!」



ちょっとおもしろくなってきてるだろ、自称癒し系マイナスイオン女子・柴咲 瑛奈。

両手を頬にあてくねくねと身体を揺らすお姉ちゃんにジト目を向けていると、はあっと深くため息が聞こえた。
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