冷徹なカレは溺甘オオカミ
わたしは“美人”というより、“美人を演じてる”っていう方がたぶん正しい。

おつむ普通、体力普通、性格これといって特筆すべき美点なし。

そんなわたしが唯一“普通”より優れていると言われたものが、顔だった。


だからわたしは、そこを守るためにいつも必死だ。

本来のおもしろみがなくてつまんない人間だということは隠して、社会人になってからの言動は“クールでデキる女風”を意識してみたり。

さっきの、電車での出来事もそう。
お気に入りのブックカバーが濡れてしまってついショックが顔に出そうになったところを、あくまで冷静ぶってかわした。

自分が本来持っているものを大事に、なんて、そんなキレイな理由じゃない。

わたしの場合、ただ唯一自分が誇れるものに、すがりついているだけだ。


そして美人を演じていくうえで、どうしても弊害にぶち当たることがある。

それはまあ、主に人間関係についてなんだけど。

女の子って、そこんとこ特に難しい。異性との距離感を間違えると、すぐ陰口の標的にされちゃうし。

だからわたしは高校生くらいまで、男の子とは極力話さないようにしてた。

正直、告白されたりしたこともあったけど……そもそも中身もよく知らない人だったし、全部丁重にお断りさせていただいていたのだ。

当時の女友達はわたしが男嫌いだと思っていたみたいで、「もったいないな~」なんて言いながらも、その顔はちょっとホッとしてるみたいだった。


で、大学時代。地元を離れて知り合いが誰もいないところに進学したわたしは、そこで予想外の事態に遭遇する。

題して、『柴咲 柊華は恋愛マスター説』だ。
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