冷徹なカレは溺甘オオカミ
彼──印南くんの言葉を聞いた瞬間、気づけば無意識に、ドアノブを回していた。



「はあーーー??!」



びくっと、ドアの向こうにいた3つの人影が、驚いたように反応する。

その中のひとり、さっきとんでも発言をした印南くんに焦点を合わせたわたしは、ずんずんと彼に近づいていく。



「柴咲さん、もういらしてたんですね。おはようございます」

「おはよう印南くん、ちょっとこっち来てくれるかな??!」



突然のわたしの登場にも、まったく動じない彼。

あくまで顔には笑みを貼り付けながら挨拶を返して、わたしはその腕を掴んだ。

ポカーンと立ち尽くす男性社員ふたりを放置し、印南くんを引き連れ一旦オフィスに入る。

そしてすぐそばにある小会議室へと、誰の目にも触れないよう身体をすべり込ませた。

忘れずに、しっかりと内側から鍵をかける。



「──なんでそう柴咲さんは、毎度毎度ヒトを壁際に追いやるんですかね」



ちょうど1週間前と同じようにごりごり壁に頭をぶつけながら、呆れたような声音で印南くんが言った。

構うことなく、わたしは彼のネクタイを掴んでその端整な顔に迫る。



「ねぇ印南くん、さっきのアレは、一体どういうこと?」

「柴咲さん、年収1千万円以上の男じゃないと付き合わないって本当ですか? エグいですね」

「そんなわけないでしょ!! いや今はそこじゃなくて、なんなのさっきの!?」
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